Chapter 02 思想家としての相貌 Face as an thinker.
ウェルネスの思想
基本理念は「メンタルフィットネス=人間が健全な精神を維持できる社会」・「フィジカルフィットネス=人間が健全な肉体で維持できる社会」・「ソーシャルフィットネス=人間と社会との健全なかかわりあい」というウェルネスの思想です。
この理念には精神的、肉体的、社会的に健全な状態から、さらに高い状態を目指していこうという考え方も含まれます。
21世紀型社会システムの中で
スピードが要求され、より高度化された効率性の高い生産システムへと進化した21世紀型の社会システム。そうした社会の中で生きていくことに、なにか複雑さを感じてしまうかも知れない。
しかし、実情は異なる。その進化したシステムは生きていくために糧を生み出すだけの行為を放棄し、時間的余裕と自分自身を深く見つめ、地域や他人のことを考える余裕を生み出す。それゆえに私たちは、より人間らしく生きられるのである。(情報誌『FACE』創刊号 「介護老人保健施設「加瀬ウェルネスタウン」に対する考え方」より抜粋再編集)
福祉という哲学的テーマ
福祉という新しい分野は人間の尊厳や価値観、生き方、個性、感性など本来、人が人間として存在しなければならない理念を追求していかなければならない。
哲学的学問の分野と考えても言い過ぎではない、永遠のテーマなのである。それゆえに建築学的視野においても遠い将来を見据えて構成を考えていくべきである。(情報誌『FACE』創刊号 「介護老人保健施設「加瀬ウェルネスタウン」に対する考え方」より抜粋再編集)
福祉先進国と日本の相違
福祉先進国では日々、そのシステムは進化し続け、ネットワークを駆使すれば容易に、そのノウハウ等を得ることはできる。しかし、日本には独自の思想、哲学、文化等の大系があり、他国のシステムをマネしただけでは結果として、良い方向に進まない。
唯一、人間という共有すべき視点からのみ、同一性=「クラスター型」のシステムの確立を見出せるのである。(情報誌『FACE』創刊号 「介護老人保健施設「加瀬ウェルネスタウン」に対する考え方」より抜粋再編集)
生きがいと共生社会
人間にとって最も大切なことは、個人個人が明確なものとして「生きがい」をもち、「生きる」ことである。
介護施設ならびに地域社会に関する人々は、その施設空間で生活する人々と共生する喜びを理解し、認識することが必要である。(情報誌『FACE』創刊号 「介護老人保健施設「加瀬ウェルネスタウン」に対する考え方」より抜粋再編集)
看取りについて
世界的視野に立ち、看取りを考察した場合、医療機関ではナースという言語であり、福祉施設ではアテンダンスという言語で定義づけできる。ナース(看護)とは患者に積極的に接し、治療をすることであり、アテンダンス(福祉施設における看護)は立合う、協力する、助け合うということ。それは人間の生き方、人格、尊厳を遵守しながら看取っていくことである。(情報誌『FACE』創刊号 「介護老人保健施設「加瀬ウェルネスタウン」に対する考え方」より抜粋再編集)
人間を知る「哲学」の重要性
福祉施設運営で最も重要なことは、施設をオペレーションする側が実践的にも学問的にも、人間の在り方を哲学的にどれだけ学んできたか、ということである。なぜなら、人間が空間や環境から受ける感性は時代によって異なり、生活レベルや教養レベルによっても違ってくるからである、勿論、性によっても。
既に自己と個性を確立された入居者がどのような行動をし、個性を損なうことなしに、人間の尊厳を保つことができるのか。その哲学的考察こそが安らぎや憩いの空間構成を考える上での基盤なのである。
(情報誌『FACE』創刊号 「介護老人保健施設「加瀬ウェルネスタウン」に対する考え方」より抜粋再編集)
今日一日を大切に生きる
…私個人の考えになりますが、人間は「生まれ」、「生き」、「死」んでゆきます。「生まれ」るということは、本人の自己責任という観点で言えば、どうにもならないことです。しかし、「生まれ」た以上、「生きる」という人生の中で、人間は無限の可能性と夢と希望、そしてその反対に、苦しさや悲しさもあります。これは自己責任で判断、決断した結果からなるものです。そしてターミナルになり、「死」=「生まれきる」があると思っています。この「死」ということは自己責任ではないと思っております。自然の摂理ですから…
ゆえに、人間は今日一日を大切に生きてゆきたいと思うのです。(情報誌『FACE』Vol.2「巻頭言」より抜粋再編集)